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第11回技術講習会 平成29年1月31日(火)@浜松医科大学

下記のとおり、熊本大学大学院生命科学研究部機能病理学分野・新森加納子先生によるセミナーを開催いたします。セミナーでは、CADASILの質量顕微鏡解析および高悪性度癌の治療法についての最新の知見をご紹介いただきます。本セミナーは大学院講義の一環ではありますが、本学の教職員、医師、学生をはじめ、学外の方も自由に聴講できます。ふるってご参加ください。

質量顕微鏡を用いたCADASILの原因不明血管沈着物の解明 神経幹細胞未分化性維持因子とその分子基盤の破綻を応用した高悪性度癌治療法の開発

新森加納子 博士
熊本大学大学院生命科学研究部機能病理学分野 助教

◆「質量顕微鏡を用いたCADASILの原因不明血管沈着物の解明」

本研究は瀬藤光利研究室と共同研究である。cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarct and leukoencephalopathy (CADASIL)は、若年者において繰り返す頭痛や多発性の脳出血を特徴とし、細胞の分化や幹細胞の制御などに関わる分子「Notch3」の遺伝子変異が原因で起こる疾患である。日本では大変稀であるが、熊本県には、この遺伝子異常を有した家系が存在する。また、この疾患には病理組織学的な特徴があり、脳や筋肉などの血管平滑筋の周囲に好酸性物質の沈着が認められる。今回質量顕微鏡を行う目的は、この血管周囲に存在する沈着物の成分の同定することである。CADASIL患者の脳血管を切片化し、質量顕微鏡により解析を行ったところ、CADASIL脳血管において特異的に存在する物質を同定した。

◆「神経幹細胞未分化性維持因子とその分子基盤の破綻を応用した高悪性度癌治療法の開発」

肺小細胞癌は、悪性度が高く低分化で急速に増殖し多くの臓器に転移するだけでなく、神経分化の特徴をもつ。私は、これまで翻訳後修飾プロテオミクス解析により、マウス神経幹細胞未分化性維持因子SMF1を発見し、このSMF1が肺癌の中でも特に悪性度の高い肺小細胞癌において強い発現が認められたことから、“神経幹細胞と肺小細胞癌の分子基盤には共通メカニズムがあり、これらが癌の悪性度に繋がっているという仮説を立てた。まず、ヒト肺癌臨床検体を用いた免疫組織染色の結果、SMF1は肺腺癌・扁平上皮癌と比べ、肺小細胞癌において高い発現が認められた。さらにSMF1はマウス神経幹細胞においてリン酸化が亢進していたが、同様に肺小細胞癌においてもリン酸化の亢進が認められた。次に、in vitro electropolation法を用いて肺小細胞癌培養株にSMF1-shRNAを導入したSMF1欠損型-安定細胞株を高免疫不全マウスに皮下移植した結果、SMF1欠損下では、腫瘍の増殖能が低下しサイズも縮小した。その他の機能解析に加え、高悪性度で神経分化の性質を有する消化器神経内分泌腫瘍や皮膚メルケル細胞癌において、SMF1の強い発現とリン酸化の亢進が認められたことから、SMF1が癌の悪性度を司っている可能性が示唆された。現在、この分子とその分子基盤の破綻を応用した癌治療法を開発中であり、国際特許に出願している。

日時: 平成29年1月31日(火)17:30 ~ 19:00
場所: 浜松医科大学臨床講義棟 小講義室
問合せ先: 浜松医科大学 細胞分子解剖学講座(山崎文義:yamazaki@hama-med.ac.jp/Tel: 053-435-2086)